建築家の役割
建築家、あるいは設計事務所とはどんな仕事をしているか、ご存知ですか?
図面を書くだけが建築家の仕事と思っている方が多くはありませんか?
そんな方のために、建築家の仕事とはどんなものなのか、どういう役割を持っているのか、建物を建てようとする方にとってどうして必要なのか・・・について、これから何回かに渡って説明してゆきますので、じっくり建築家の仕事を理解して下さい。(てまえみそな話になると思いますが、ご容赦ください)建築家の仕事を簡単に分類すると、ご相談内容に応じ条件に合った最適な案を提案、設計(基本設計、実施設計)、工事(業者選定と工事契約への立ち会い、工事監理と完成検査)、アフターフォローになります。


 

1. 基本設計とは、建物の概略を決める設計段階で、基本的な設計方針はここで決めます(住宅の場合には、この段階で平面や外観を決めます)。
 
計画案
  私の場合は少なくても数案、多い場合は20数案の計画案をつくり、オーナーと徹底的に打ち合わせを行います。だいたいは1/100ぐらいの図面で打ち合わせを行い、必要に応じてもう少し大きな図面で家具の配置なども検討します。その他にスケッチパースやスタディ模型をつくり、建物をイメージしていただきます。基本設計に要する時間は建築家によりまちまちですが、私の場合は短くても2〜3ヶ月、長い場合は6ヶ月くらいになります。建築家によっては1年以上かける人もいるくらい重要な作業となります。
計画案予算
  おおまかな予算もこの段階で想定しておきます。いくらお金をかけてもいいという人はほとんどなく、たいていは限られた予算の中でたくさんの希望を満たそうという方が多いのですが、建築家はこれまでの経験からだいたいの予算の検討がつきますから、その中で、どのように予算を振り分けるかをオーナーと相談しながら決めていきます。
大切なこと
  この段階で私は、オーナーが何を大切にしたいかを伺うようにしています。建物を考えるのは、ただの間取りではなく、オーナー家族の夢の実現だと思います。その夢とは何かをいっしょに考えるようにしています。実は改めて考えてみないと、家を建てることが目的となってしまい、ただ個室がいくつあって、リビングがあって、ダイニングがあるというような家を漠然と考えている方が多いのです。その家でどんな生活がしたいのか。どのようなことを実現したいのか。改めて考えてみることがとても大切だと思います。
誤解
  よくある建築家への誤解に「変わった家を建てる」というのがありますが、オーナーの希望を伺い、それを実現した結果が、変わった家になることが多いのです。多くの建築家は最初から変わった家を建てようとしているのではないことをご理解ください。

何が重要か
  さて、何を大切にしたいかについて話し合っている時に、こんなことがありました。最初は一人一人の個室が欲しいとか、日のあたるリビングがほしいとか、プラバシーは大切にしたいとおっしゃっていたその方は、いろいろと話していくうちに、年をとっても住み続けられる家がもっとも大切だと気づかれました。そこで、住み続けるために工夫をした住宅を構想されたのです。本人にとっては思ってもいなかったことでした。このようにオーナーも気がつかない希望というものがあるものです。ですから基本設計はじっくりと取り組むことが必要です。
   

2. 実施設計とは基本設計で決まった計画を、工事ができる図面に書く作業です。
   
基本設計の次のステップ
  建て売りやハウスメーカーの中には、設計事務所で言う基本設計の図面に数枚の図面を付け加えただけで実施設計と言っているところがあるようですが(そのような所ばかりではないことも付け加えておきます)、設計事務所ではそのようなことはしません。

予算のズレを回避
  建設会社という第三者に設計の意図を正しく伝え、予算上の食い違いが起こらないようにするために、たくさんの図面が必要となります。建設会社は適正な利益を出しながら仕事をします。それは当然のことですから、なんら問題はありません。ところが図面がしっかりしていないと、解釈によってはもっと利益を生むことができることがあります。例えば床のフローリングでも、ムクのフローリングから、わずか0.2mmの厚さの板を張ったものまでいろいろな種類があります。当然値段もピンからキリまでありますが、これが図面上、フローリングとしか表示していなかったらどうなるでしょうか。オーナーはどちらかと言われればムクを選ばれると思いますが、建設業者は少しでも利益を出すために、積層材を選ぶ事でしょう。すべての材料にこのようにグレードの違いがあり、また施工方法の違いがあります。そこで、そのような予算上の食い違いを出さないために、きちんと指定して、きちんと施工してもらう図面が必要になるのです。ちなみに普通の木造住宅でも30〜50枚くらいの図面が必要となります。図面枚数は建物の大きさとは比例しません。小さくとも必要な図面はたくさんあります。
建築確認申請の提出
  実施設計が終了する頃に、役所に建築確認申請を出します。資格をもった建築士がオーナーの代行と言う形で申請します。住宅でも2〜3週間、規模の大きい建物では1〜2ヶ月くらいの時間がかかります。
 

3. 業者選定と工事契約への立ち会いとは、出来上がった実施設計図をもとに、建設会社に見積をしていただき、適正な業者をオーナーが選び、契約を結ぶことです。
   
見積もりは大変な作業
  通常は2〜3社に見積をお願いします。私は1社だけの見積はあまりしません。数社の方々にご協力いただきます。見積というのは一つ一つの材料が、どのくらいの量が必要かを、図面をもとに計算するので大変に手間のかかる作業です。(特に図面が多いと大変です)したがって建設会社では大変な苦労をして見積を出します。そのことはよく知っておいてください。
驚くべき実例
  しかし昔のようにどんぶり勘定で見積をやっていたのでは、予算上のトラブルのもとになります。きちんとした見積をできるところにお願いすることになります。見積についてはこんな経験があります。当初事情があって、1社だけに見積をお願いしたのですが、大幅に予算をオーバーしてしまいました。そこで改めて3社の方にお願いして同じ図面で見積をしてもらったところ、最初の見積より、25%も安い見積がでてきたのです。この例がすべての建設会社にあてはまるわけではありません。どんな場合でも適正な見積を行い、それで信用をかちえている会社もたくさんあります。しかし、そういう部分があるもの、残念ながら事実です。

建築家が適正かどうかを判断
  設計料よりはるかに大きな差額が見積の競争だけで出ることになります。それだけでも建築家に頼んだほうが得すると思いませんか。…だいぶ、てまえみそですね(笑)建築家にとっては、提出された見積を査定するのも重要な仕事です。単純に値段で決める訳にはいきません。きちんと図面どおりに見積されているか。落しはないかをチェックします。その上で、適切と思われる建設会社をオーナーに推薦します。
決定はオーナー、そして工事契約
  アドバイスはさせていただきますが、建設会社を決定するのはオーナーになります。長年の付き合いを重要視される方も多いようです。その場合でも、複数の建設会社に競争見積をしてもらったほうが良いと思います。建設会社が決まると工事契約になります。建築家は、オーナーと建設会社が結ぶ工事契約に立ち会い、署名捺印します。契約書には、図面一式と建設会社の見積書が付けられます。
   

4. 工事監理とは工事が設計どおりに行われているかを随時チェックし、建物が完成すると総チェックして引き渡しに立会います。
   
建築家の目が光る
  建物の品質を決める、最も大切なことがこの監理です。通常は1週間に1回、その他重要なポイントに立ち会います。いわゆる手抜き工事などがされていないか、指定された材料が使われているかなどをチェックすると共に、図面で表現しきれないことを、職人に伝えたり、逆にもっといい方法について教えてもらったりしながら、現場は進められます。
現場でいいものが作られる
  建築家も万能ではありませんから、現場で実際につくる人の意見をきくことは勉強になります。そして、みんなで知恵を出し合いながらいいものを作っていくというのが理想的な姿です。望ましいことではありませんが、現場で変更せざるを得ないことも多々あります。そのような時に適切な処置を行い、予算に係わる時には査定をし、精算のためにチェックを行うのも重要な役割になります。
最終チェックと引き渡し
  建物が完成すると、図面どおりにできているかをチェックします。検査に合格すると、引き渡しとなります。
   
 
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